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経鼻胃管を入れたら、必ずレントゲンを撮りましょう!続き。 [看護師さんへ]

 先日の記事の続きです。今回はガイドラインからです。結論から言えば、やはりレントゲンを撮像すべきです。

 静脈経腸栄養ガイドラインというのがあります。ネットで見つからず書籍を購入してしまいましたが、まあ勉強になるからいっかと思っています。





 まず、経鼻胃管を長期に入れていることについてです。私も長期になるのなら、胃瘻にすべきだと思っています。前回の記事にも書きました。ガイドラインのP.17には以下のようにあります。

 「経管栄養が短期間の場合は、経鼻アクセスを選択する。4週間以上の長期になる場合や長期になることが予想される場合は、消化管瘻アクセス(可能な場合は胃瘻が第一選択)を選択する。」

 理由も述べられています。一部を引用しますが「栄養療法の適応とPEGの適応とが混同して議論されているが、これらは分けて考えるべきであり、したがって、これらの症例においても、栄養療法という観点から適応と判断されたら、積極的にPEGを実施することを推奨する。」とあります。そうなんですよ。胃瘻はダメだけど経鼻胃管の栄養は良いんだと言うのは違うと思います。長期に経管栄養をするなら胃瘻をすべきです。胃瘻がダメなんじゃなくて、長期の経腸栄養がダメなんじゃないでしょうか?胃瘻じゃなくて経鼻胃管なら良いんじゃないの?と考えて、長期に経管栄養をするから、入れ替えの度にレントゲンを撮るなんて!と言う話になって、事故の危険を高めているのかも知れませんよ。

 胃管先端の位置の確認法については二カ所に記載があります。まず一つ目は、以下の通りでP.52です。

 「経鼻カテーテル留置後には、カテーテルの先端位置をX線撮影などの適切な方法で確認する。」

 カテーテル先端が不適切な位置にある場合、特に気道内に誤挿入されている場合には致死的合併症に陥る可能性があるため、カテーテル先端位置をX線撮影により必ず確認することが推奨されている(P.53)。

 すべての経鼻カテーテル挿入症例に対してX線撮影でカテーテルの先端位置確認を行うことも現実的ではない。しかし、意識障害症例や咳嗽反射が減弱・消失している症例に経鼻カテーテルを挿入して経腸栄養を開始する場合には、X線撮影で先端位置確認を行い、その後の留置期間中にはカテーテルの体外部分の目盛からカテーテル位置が移動していないことを必ず確認してから経腸栄養を開始する、という管理方法が推奨される(P.53)。

 二つ目は、P.113です。

 「カテーテル先端位置は原則としてX線撮影で確認する。」

 連続100例のベッドサイド留置直後のX線写真確認で、80%が胃あるいは十二指腸、19%が食道、1%が胸腔であったとの報告もある(P.114)。
 吸引された胃液のpH確認(胃液のpHは3~5程度とされる)についても、そもそも栄養投与に用いる細径カテーテルで胃液を確実に吸引するのは困難であるし、プロトンポンプ阻害薬など制酸薬使用下ではpH値の信頼性は乏しい。理論的には、経腸栄養開始前に、X線撮影により位置確認を行う方法が最も安全性が高い。
 しかしながら、経鼻胃カテーテルを用いて経腸栄養を行う場合、すべての症例に対して、経腸栄養剤投与開始前にX線撮影を行う必要があるのか、という問題がある。少なくとも、意識障害や咳嗽反射が減弱している症例において経鼻胃カテーテルを用いて経腸栄養を施行する場合には、カテーテル留置時に先端が確実に胃内に留置されていることをX線撮影で確認すること、日々の経腸栄養投与時にはカテーテルの目盛を確認してカテーテルが移動していないこと、可能であれば胃液を逆流させること、さらにその胃液のpHを測定すること、などによって確認することを推奨する(P.114)。

 まとめると、ポイントは以下のようになります。

(1)経鼻胃管が気道に入っていて、そこに栄養剤を入れてしまうと致死的である。
(2)ある報告では1%の患者さんで気道に入る可能性がある。
(3)意識障害がなく、咳嗽反射が保たれている患者さんに経腸栄養を行うことがあるのか?

 一つずつ意見を述べます。

(1)経鼻胃管が気道に入っていて、そこに栄養剤を入れてしまうと致死的である。
 もし栄養剤を肺に入れてしまっても、ちょっと熱が出るぐらいで回復するというのであれば、まあ胃泡音を聞くだけでも良いんじゃない?と言う事になるでしょう。しかし、致死的なのです。ここを良く考えなければなりません。胃管ぐらいで?と言う人は、胃管についての考えが甘いと思います。どんな行為でも致死的な不利益を生じる可能性があるのであれば、最大限の注意を払って対応すべきではないでしょうか?

(2)ある報告では1%の患者さんで気道に入る可能性がある。
 今の医療では1%と言うのはすごい高率と判断されます。100人に行うと1人に発生するということです。100回やったら1回起こるのではなく、高校時代の確率のことを思い出して戴けば良いですが、100回経鼻胃管を挿入し、1%の確率で発生する気道への誤挿入がどのぐらい発生するかと考えると、一度もこの合併症を経験しない確率は、0.99^100と言う事になります。これは36.6%程度であり、つまり100回行えば、63.4%の確率で一回以上経験するという事です。これはすごい高率ですよ。頻繁に経鼻胃管を入れ換えていると言う人は、頻繁に気道への誤挿入を経験すると考えなければなりません。

(3)意識障害がなく、咳嗽反射が保たれている患者さんに経腸栄養を行うことがあるのか?
 私が経験不足であるためかもしれませんが、意識がしっかりしていて、咳嗽反射がしっかりしている人に経鼻胃管を行ったことがありません(通常の栄養投与のためにです)。よって、全例にレントゲンでの先端位置確認が必要ではないでしょうか?

 以上参考になれば幸いです。


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