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頻脈か?頻拍か?それが問題だ [CPRの基礎]

 心臓の拍動が乱れる(正常とは規則性や早さが違う)病気を不整脈と呼びます。不整脈には心拍数が早いものと遅いもの(正常な物もありますが)があり、英語では早い方を「tachycardia」、遅い方を「bradycardia」と呼びます。前者を「タヒってる」あるいは「タキってる」、後者を「ブラディがある」等と言うのはその為です。今思ったのですが、「ブラディってる」ってどうして言わないのかなあ?

 日本語では、tachycardiaを「頻拍」、bradycardiaを「徐脈」と言っている事が多いです。えっ?「頻脈」とか「徐拍」って書いてある本もあるよ!どうなってるの???と言うのが今日のお話です。

 いつもの通り、結論から言いましょう。

・tachydardia、つまり心拍数が早い状態は「頻拍」
・bradycardia、つまり心拍数が遅い、あるいは脈拍数が遅い状態は「徐脈」

 と呼びましょう。あるいは、英語ではその区別がないので、英語で言いましょう。後者に心拍数と脈拍数を記載した意味はすぐ解説します。

 解説です。

 まず、心拍数と脈拍数の違いです。前者はheart rate、後者はpulse rateで、通常両者は同じ数です。心臓が拍動すれば、脈が触れるからです。しかし、心臓が拍動しても充分な血液を送り出せず、脈が触れないことがあります。よって、心拍数≧脈拍数の関係があります。たぶんですが、心拍数<脈拍数となることはありません。

 簡単に言えば、心電図や心エコーなどで拍動を数えた場合、それは心拍数なので、頻拍、徐拍と言います。心電図ではなく、手で触れて、あるいはパルスオキシメーターなどで拍動を数えた場合、脈拍数ですから、頻脈、徐脈と言います。

 心拍数が早い場合、治療の対象となる可能性があります。心拍数は早いのですが、脈拍数が正常だった場合、何もしなくて良いのかというと、やはり介入が必要でしょうから、心拍数の方が早いことを重視し、頻拍というのでしょう。
 心拍数が遅い場合には、間違いなく脈拍数も遅いです。しかし、心拍数が正常であっても、脈拍数が遅い場合があります。その場合には心拍数が正常なのに、意識障害などが出るかも知れません。よって、心拍が遅い場合には、脈拍の方が大切になります。よって、遅い場合には徐脈と言います。
 以下の本のP.9に書かれています。本日M2Plusで電子書籍が発売になります!是非ご購入を!!


救急心電図 ただいま診断中!

救急心電図 ただいま診断中!

  • 作者: 布施 淳
  • 出版社/メーカー: 中外医学社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


 色々な本を読んでみました。いくつかのタイプに分けられます。印象としては、まあどっちでもええんちゃうの?と言う感じを受けます。

(1)早いのは頻拍、遅いのは徐脈
 一番多かったのが結論と同じものです。しかし、例えば「JRC蘇生ガイドライン2015」はきちんと区別していない気がします。頻拍と書いてみたり頻脈と書いてみたり、、、、、、、

(2)区別をしていない物
 頻拍だろうが頻脈だろうが、徐脈だろうが徐拍だろうがどれでも良いですよって記載です。例えば、こちらの内科学会雑誌の論文は(4)を基本としていますが、両方の記載をしています。

(3)正常洞調律の場合は脈、それ以外は拍とするもの
 (1)と同じなのですが、洞性頻拍ではなく、洞性頻脈と言うべきだと言うのです。つまり、洞結節から信号が出ているのですが、脈の異常が出ていると言う場合は、拍ではなく脈とすべきと言うものです。
 脈が遅い場合で、何とか徐脈と出て来るのは洞性徐脈だけなので(他に何とか徐拍と呼ぶべき状態を知りません。あったら教えてください)洞性徐脈でいいでしょう。遅い不整脈を総称すると徐拍性不整脈となるのかも知れませんが、あまり見かけませんね。以下にこの立場を取る本を幾つか紹介しました。

(4)どちらも拍を使うべきとするもの
 今見つけられませんでしたが、以前こう言う記載をした本を読んだ記憶があります。

 ちなみに、英語はこう言った言い方はないので、区別する必要はありません。アメリカに生まれたかったかも。

 以下の本は、慣習だという説明ですが、(3)の立場です。脈が遅い場合には心電図を診た場合でも、徐脈と言いますと書いています。やはり洞性頻拍ではなく、洞性頻脈と呼びましょうと書かれています。P.76ページのコラムにあります。





 こちらの本も同じように(3)の立場を取っているように思います。洞頻脈であり、その他は頻拍と書いています。頻脈性不整脈という記載があったり、洞頻脈の所に頻拍を来す疾患であると書かれていたり、区別をあまりしていない気もしますが。


心電図と不整脈の手びき

心電図と不整脈の手びき

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 南山堂
  • 発売日: 2013/08/05
  • メディア: 単行本



 こちらの本のP.111にも「異所性調律で心拍数が100/分以上のときが「頻拍」と定義される」と記載されています。





 何がなんだか訳が分からなくなりましたが、要するにどっちでも大きな問題はないので、カンファレンスとか、その他色々な場面で、「それは、洞性頻拍じゃなくて洞性頻脈と言うべきだ」などと言う必要はないということですね。


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