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ガイドラインをどう使うか? [研修医教育]

 医者の間では、ガイドラインという物が流行っています。心筋梗塞のガイドラインも肺炎のガイドラインも、その他新しいガイドラインがどんどん作られています。そのガイドラインはどうやって作られるかというと、Aと言う疾患に対してBと言う薬を使うと、治癒までの期間が短縮するのか?とか、疾患Aは熱が出るのだが、治療Bにより熱が直ぐ下がるのか?などと言う疑問から、それらを調べた論文を探して、有用だと思われる論文を抽出し、それらをまとめて結論を書いています。最近は訴訟の資料に使われたりしますので、医者は必ず読まなければなりません。

 そして、ガイドラインにこう書いてあるから、こうしなければならないのに、何故していない!と言う事が起こってしまいます。はたして、ガイドラインは絶対なのでしょうか??

 例えば、日本合コン医学会のガイドラインに以下のような物があります(もちろん、こんな学会はありませんし、冗談です。例えで分かりやすくと言う事です)。以前書いた物です

CQ1 合コンに参加する場合、服装は赤色がメインのものにすべきである(クラスIIa)。
 気合いを入れる時に、赤色の服を着るとことは心理学的に証明された事実である。タイガーウッズは最終ラウンドで赤いシャツを着ているのは有名である。機動戦士ガンダムでも、赤い彗星シャアは3倍の能力を発揮している。よって合コンに赤い服を着ていけば、持てる能力を最大限に発揮できる可能性が高いと考えられる。
 また、この事実を知っている者は、赤を着ている人物は本気で望んでいると分かるため、かかんにアタックしてくる可能性が高く、成功率が高い(LOE3)と考えられる。
 しかし、逆に相手を攻撃しすぎて失敗する副作用も報告されており、合コン会場での行動や発言には細心の注意が必要である。

 というような感じです。は?という感じですよね。これを読んで、じゃあ合コンには絶対に赤を着ていかなければならないとは思いませんよね。赤が似合う人もいるし、合コンと言っても色々じゃないって思いますよね。また、マニュアル本というものが多く売られていますが、それもガイドラインに近い物です。マニュアル本通りにやれば全て上手く行くと思う人はいないと思いますが、何故か診療ではガイドラインに従うべきだと思う人が、医者でも患者さんでもおられるんですよね。

 ガイドラインに引用されている論文は、エビデンスレベルの高い論文だったとしても、ある特定の患者さんの集団で、ある介入が有用だった(と言っても、例えば死亡率が5%なのが3%になったと言うような場合もあります)と言うだけです。死亡率を2%減らしたと言う事実がどれほどの意味を持つのか良く考えなければなりません。心臓が動いていただけで寝たきりになってしまった人が多いのではないか、その介入はお金がかかるのではないか、別の介入であれば短期間で良いが、その介入は一生薬を飲み続けなければならないということなのではないか、そして、一生飲み続けた場合の問題点についてはまだ分かっていないのではないか、その介入をすることで別の病気になるのではないかなどです。

 今目の前にいる患者さんが、その特定の患者さんの集団と同じような患者さんかどうか、その介入は患者さんに本当に利益をもたらすのか?その患者さんの利益とは何か?考えるのは医者の仕事です。

 患者さんの背景も様々です。お金持ちからそうでない人、芸能人から一般の人、背の高い人、高くない人、色々です。そして病気の程度も様々ですし、身体の元気さも色々です。お金持ちの人なら、お金がいくらかかっても良いでしょうし、有名人ならその治療が出来る数少ない先生に診てもらいやすいでしょう。頻繁に通院したり、長期入院が必要な治療であれば、自営業の人はなかなかその治療を受けにくいでしょう。

 それなのに、一律にこう言う治療が適切であると言われて、その通りにしなければならないと思う方がおかしいです。ましてや裁判の資料に使われるなんて!と思います。アメリカなどではガイドラインは裁判の資料に使われないそうですし、最近は、前文に「訴訟の資料として使用することを禁ずる」と記載するガイドラインも出てきています。

 ガイドラインにこう書いてあるからと言う単純な理由ではなく、ガイドラインにはこう書いてあって、この患者さんには適応すると思われるから、この患者さんにはガイドラインに書いてある治療や検査をしよう!と考えなければなりません。研修医の皆さん頑張りましょうね。


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