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丸投げはいけないのか? [研修医教育]

 医者の世界では(もしかしたら他の業種でもあるのかもしれませんが)「今日丸投げされちゃったよ」とか「丸投げですか?」と言う会話がよくされています。最初に結論を言っておきますが、私は丸投げ大歓迎です。しかし、丸投げは自分ではしないように、丸投げと言われないように気をつけています。研修医の皆さんも是非まねをしてください。

 患者さんがやってきて、ある疾患が疑われ、専門医に診察をお願いします。それだけだと「丸投げだ」と怒られることがあります。なので、例えば、ある疾患になりやすいリスクファクターがないかどうか、画像診断をしてあるかどうかなどが大切になります。

 しかし、専門でない者には、そのある疾患にどんなデータが大切なのか?分からない事があります。画像診断や採血も、どのような検査をしたら良いのか分からない事があります。しかし、専門医はそれが専門だからよく分かります。相談されたら、それらの指示をしたら良いだけです。よって、皆さんが専門医になったら、是非快く、後はこちらでやりますと言うようにしましょう。

 そうでなければ、コンサルトをしてきたお医者さんは、嫌な気分になり、次からは相談してこない可能性があります。そうなって患者さんに不利益が及んだ場合、それはコンサルトをしなかった医師だけが責められるべきでしょうか?コンサルトをしやすい雰囲気を作っていない専門医や病院に問題はないのでしょうか?

 採血ぐらいやっておいてよ!と言われることがありますが、採血には特別なスピッツ(血液を入れる容器です)が必要な場合があります。先に採血してからコンサルトした場合、多くは検査室に連絡して追加をお願いすればいいですが、特別なスピッツが必要だった場合には、再度患者さんから採血しなければなりません。再度針を刺される患者さんのことを考えなくて良いのでしょうか?

 画像についても同じです。学生時代に授業でそういう話がありました。あなたが開業した場合、安い機械で撮影することになると。その検査で異常がなかったと言っても、本当に異常がないかどうかあやしく、専門医を受診した場合、再度同じ検査をすることになるだろう。検査と言うのは機械だけでなく、どのように検査をするかと言う設定も色々あるのである。最初に行った検査のお金と、例えば放射線被爆はなんの意味があるのか?

 なので、個人的には専門医に丸投げしていいと思います。コンサルトを受ける側は、必要なデータがあればその場でオーダーし、本当に必要であれば、その先生に「次回からはこれとこれをやっておいてください」と伝えればいいのです。「丸投げするなよ!」と言っても良いことは何もありません。明日逆の立場になるかもしれないのですから。

 マッシー池田先生もブログで同じようなことを言われています。くも膜下出血を疑ったら、すぐに脳外科コンサルトだと。以下引用です。

 紹介元であるあなたの施設でCTを撮影したとしても、その結果如何にかかわらず、紹介先の脳神経外科では、SAHをより鋭敏に捉えるために、造影CTも含めて撮影条件を工夫してCT取り直すことはわかりきっている。なのにあなたが余計な手間隙をかけている間に再出血でもされたら、それこそ元も子もなくなってしまう。真っ当な脳神経外科医であれば、たとえ腰椎穿刺までやってSAHが否定されたとしても、患者さんとともにSAHでなかったことを喜ぶとともに、どんな軽症のSAHも見逃さないとするあなたの熱意を、患者さんの目の前で誉めてくれるはずだ。だから、SAH疑いの症例に対し、プライマリケア医自身が、動脈瘤再破裂のリスクを伴う腰椎穿刺を行う必要性は全くない。いち早く脳神経外科医に転送するだけで十分である。

 もちろんですが、本当にこのような対応をして、褒めてくれる脳外科の先生に会ったことはありません。CTぐらいは撮像しますが。

 ただ、検査が異常ないからと言って重大な病気を否定すると言うことこそ最もやってはいけないことですし、そういう条件の時こそ、専門医の力量が試されます。だからこそ専門医に相談しているわけですから、「検査が異常ないなら返していいんじゃないの?丸投げですか?」等と言わないでくださいね。

 専門医になった時には、是非快く患者さんを診ていただければうれしいです。

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