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つるし上げカンファレンスはやめましょう [研修医教育]

 医師の仕事の一つにカンファレンスがあります。医療ドラマでも必ず出てきますから、みなさん、おなじみでしょう。ドラマではイケメン、美女の医師が大人数おられますが、実際はもっと少人数な事が多いです。

 喧嘩みたいなことが発生する場面がドラマでありますが、実際のカンファレンスでもそのようなことがあります。特に研修医の先生がミスをした患者さんの場合です。なぜそれをやってない?なぜ?なぜ?と質問形式ではありますが、攻めているのは明らかです。こういうのをつるし上げカンファレンスと呼んでいるようです。私も幸い経験がありませんが、このようなカンファレンスは教育的意味はほとんどないと思いますので、是非やめましょう。罪を憎んで人を憎まずで、間違いを皆で共有はするけれど、やってしまった人は、自分の変わりにミスをしてくれた人だと思うようにしなければなりません。

 例えば、先日紹介させていただいた本にありました。


話すことあり、聞くことあり—研修医当直御法度外伝

話すことあり、聞くことあり—研修医当直御法度外伝

  • 作者: 寺沢 秀一
  • 出版社/メーカー: シービーアール
  • 発売日: 2018/06/15
  • メディア: 単行本


 上腹部痛の患者さんが来院され、実は心筋梗塞だったのだが、見逃したと言う症例についてのカンファレンスで、上級医の一人が「なぜ心電図をとらなかったの?」と質問でありながら攻めるような言葉を。「そんなこと言っても意味がない」と言えばいいのかと私は思いましたが、そう言うと、今度はその指導医を攻めることになってしまいます。

 著者の寺澤先生は違います。「そりゃあ、心電計が壊れていたんだよね!」と言うのだそうです。素晴らしすぎます!確かに担当した研修医の先生は、心電図をとらなければならなかった事を十分反省しているでしょうからね。

 特に下壁梗塞だと上腹部痛がよく起こりますので、上腹部痛の患者さんを診たら、心電図をとるのは常識ですが、常識だと言えるようになったのはいつなのか?私も思い出せないです。きっと研修医の時には知らなかったでしょう。だから、今時分がそれを知っているからと言って、知らない研修医の先生を攻めるのは違います。知らないことは罪ではないのです。知らなかったのは、それを今まで教えなかった誰か(自分かもしれません)が悪いのです。教えたのに覚えていないのであれば、覚えているような伝え方をしていなかった、あるいは意義が理解できるように伝えていなかったのが行けないのです。知らなかった人に罪はありません。

 ちなみに、心筋梗塞の痛みは、三叉神経第三枝からTh10間でのどこが痛くなってもおかしくないんだそうです。下あごからおへそまでです。歯が痛くて歯医者さんへ、肩が痛くて整形外科へ、お腹が痛くて消化器内科へと言うことはよくあることです。

 VINDICATE+P!!!と言う鑑別の仕方があります。最初に思い出すべきはVのvascularです。致死的になりえますし、どんな患者さんが来られても、これは血管が原因ではないか?と考えるべきだと若い人にお伝えしています。よって腹痛の患者さんが来られたら最初に考えるのは心筋梗塞、動脈解離、腹部大動脈瘤、腎梗塞、脾梗塞、上腸間膜動脈塞栓症、門脈血栓症、その他色々です。

UpToDate "Initial evaluation and management of suspected acute coronary syndrome (myocardial infarction, unstable angina) in the emergency department"より。
「救急外来における急性冠症候群(心筋梗塞、不安定狭心症)疑い患者の初期評価と治療」

 Ischemic pain often radiates to other parts of the body including the upper abdomen (epigastrium), shoulders, arms (upper and forearm), wrist, fingers, neck and throat, lower jaw and teeth (but not upper jaw), and not infrequently to the back (specifically the interscapular region).

 虚血による痛みは、しばしば体の他の部分に放散する。例えば上腹部(心窩部)、肩、腕(上腕、前腕)、手首、指、首やのど、下顎や歯(上顎はのぞく)等である。しかし、背部(特に肩甲骨間部位)に放散する事も稀では無い。


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