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昨日の続きです。 [医学関連]

 昨日の続きです。この記事、2011年6月7日午前9時半現在、713アクセスを頂いています。興味のある方が多いんですね。一番多いかと思ったら、下肢挙上に関するこちらの記事は1012アクセスでした。

 昨日の記事のさかたさんとRさんのコメントに対するお返事です。記事のネタ提供ありがとうございます!

 まず「さかたさん」からです。

>先生、私の失礼なコメントに対し記事にしていただきありがとうございます。

 そんなことありませんよ。何でも書いてください。

>>パイロットの話を書きましたが、パイロットは訓練しています
> 救急救命士も訓練をかなり積んでいます。もちろん死ぬことはほぼありませんが・・・しかしながら救急救命士にも差があるのも事実です(差があってはならないのですが、自己研賛や生涯学習を維持しない人も中にはいるでしょう)

 もちろん救急救命士さんの大変な訓練はある程度知っていますよ。でも生きている人への点滴に関する訓練はしていないでしょ。点滴は入れるだけでなく、入れる適応とか、製剤についてとか、問題が起こったらどうするのか、色々な知識を必要とします。全部訓練しなければ、点滴を入れる訓練をしているとは言えないと思います。

>>限られた現場で、限られた情報しか得られない状況で、例えばこの患者さんは緊張性気胸であり、今すぐ脱気しないと死んでしまう!と確実に言えますか?限られた現場だからこそ、判断は難しいです。医師は、緊張性気胸を疑って脱気をしたが、緊張性気胸でなかった場合、脱気が上手く行かなかった場合、誤って肝臓を損傷してしまった場合などの対応を知っていますし、自分の判断で行えます。さかたさんは例えばその知識がおありですか?

>緊張性気胸であるだろういう判断はできますよ。まちがいなく気胸はある、しかし血胸も否定はできない。こういう場合が多くないでしょうか?
>確実には言えません。医師ではないので。心の中では確実にあるとは思っていますが、医師に所見を伝え、緊張性気胸疑いですとしか言えません。診断はできないのですから。

 ここですよ。間違いなく気胸はあると何故言えるのでしょう?申し訳ないですが、ここが甘い所だと思います。医師ではないので診断できないのではなく、不利な現場であるから出来ないんですよね。医師でも病院内の恵まれた環境であっても確実に診断は出来ません。確実でないからこそ、診断が違っていた場合の事、治療がうまく行かなかった時の事を考えて行動しています。医師でないから確実に言えませんと言う言い訳は通用しませんよ。緊張性気胸だと疑ったら直ちに行動し、次の対応を正しく行えなければいけません。医師とか救急救命士だから(現状の救急救命士さんには出来ませんが)とか関係ないですよ。私は救急救命士だから医師より挿管が下手でも良いとか思っていませんよね。挿管が上手くいかなかったらどうするのかも訓練していますよね。行うのであれば、最高の処置を行って頂きたいですし、そう出来るように訓練されていますよね。

>>また、脱気による肝臓損傷の話ですが、それは留置針等を用いた一時的な減圧に伴うものでしょうか?それともチェストチューブ等を使用した場合に伴うものでしょうか?後者によるものであれば、存じあげません。

 どちらでも良いのですが、そういった起こりうる全ての事に対して対応が出来ますか?と言う事です。医師でも無理な事がありますが、医師はそれで訴訟になる事もあります。救急救命士さんもそう言った事になっても良いですか?そういう覚悟がありますか?と言う事です。

>>訴訟のリスクなども自分たちで負っていますよ
>医師ほど訴訟のリスクは低いでしょうが、我々も可能性はあります。

 より高くなると言う事です。やれる事が増えれば、責任も重くなります。私は医師でないのでよく分かりません、、、、、と言う言い訳は通用しなくなります。

>>私たち医師も緊急時は考える余地はありませんが、治療方針を事後でも良いので協議していますよ。救急救命士さんもMC関係のカンファレンスなどありますよね。「協議する必要もありません」とは書き間違いであると信じたいです

>治療ではありませんが、活動の反省会等を事後協議することは非常に大切です。上記の「必要もありません」に関してですが、全くの書き違いです。失礼しました。

 良かったです。治療と言う言葉は難しいですが、皆さんが行った活動は治療の一環ですよ。「病院前救護におけるメディカルコントロール」と言う本には、地域が病院のようになるとありますよ。皆さんが患者さんに接触した所から治療が始まっており、それを医師が保障していると言う事だと理解していますが。

>救急救命士は救急救命士であって、医師でもなくミニドクターでもない、看護師でもない。しかしながら、なぜか下に見られてしまう(表現が適切かどうかは分かりません)傾向が未だに消えてくれません。先生のおっしゃるように救急救命士はプロなのですから・・・

 確かに頑張っているのにそう見られる事も多いみたいですね。辛い所ですが、地道に頑張って頂くしかありません。とにかく現在はそういう状況です。変えるためには地道に頑張るしかありません。
 書いて良いか分かりませんが、ダメな救急救命士さんもおられますので(元記事のコメントに書きました)。そう言った人が目立たなくなるぐらい、さかたさんのような方が頑張って頂くと良いと思います。

>そしてまた、救急救命士による点滴処置に関しての私見は控えさせていただきますが、病院内でほぼルーチンに点滴をし、輸液速度もめちゃくちゃな病院もあるのも知っております。看護師が行うルーチンな点滴は危険な行為ではないのでしょうか?(あらかじめ医師との取り決めがあるのかどうかは不明です)

 これは何をさしているのか分かりませんが、例えば救急外来で患者さんが来たらとりあえずルートをとると言うような事でしょうか?輸液速度は難しいですが、とりあえずタッタッタ、、、、と落とすと言うようなのは問題ありません。その後医師が必ず速度を設定しますし、何か起こっても対応します。よって救急車で来院した患者さんには全員点滴ルートを確保する(と言うのをルーチンと言うのであれば)事は、医師やその病院のスタンスであり、全く問題ありません。
 もしずっとタッタッタと落としているのであれば危険な行為である可能性がありますが、それは医師の裁量です(医師が知らなかったとしても)。医師法上、患者さんの治療であると本人が言えば、医師は何をやっても良い職業です。もちろん民事とかであの点滴速度はおかしかった!と言う事はありますが。それにたぶん救急隊の方には分からない色々な事情や患者さんの状態があると思います。

 救急隊の方は、そこで完結するのではなく、病院へ運ぶので、多くの病院が納得する治療をして頂く必要があります。だから、色々制限があるのでしょうね。

 それから、何度か書いていますが、看護師さんは点滴をする事がすでに認められています。救急救命士さんはこれからです。慎重に行動し、充分な知識や技術があると認めてもらえないと、、、、、、例えば積極的安楽死があります。癌の末期などの人に注射をしたり、必要な処置を中止したりして死なせる事です。これを今の日本で認めてもらう為にはどうすべきか???と似ていると思います。私が誰にも相談せず、勝手に行えば非難されますし、安楽死が認められるのは先へ延びる事となるでしょう。心臓移植はそうなった訳です。

>>一番の解決法は、この方がお医者さんになる事です。医者だったら(病院の薬を持ち出しても良いかどうかは分かりませんが)非番の時でも対応しなければならないですし、医師は誰の指示も受ける必要がありませんので。今から医学部に入って、卒業するのが60歳、まだまだやれます!

>本当にそうですよね!!医師になるのが一番です!!
>現実的に、困難でしょうけど。。。

 出来たら頑張って頂けるとうれしいです。

>今回は、私のコメントに対し対応して頂き、ありがとうございました。
>このような議論できる事、感謝しております。

 こちらこそご意見ありがとうございます。出来たら直接お会いしてお話できればと思いますが、いつかそのような機会が出きればと思います。

病院前救護におけるメディカルコントロール

病院前救護におけるメディカルコントロール

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: へるす出版
  • 発売日: 2010/08
  • メディア: 大型本


>初めてコメントさせて頂きます。郷土である鹿児島を思いながら、kim先生のブログを拝見させて頂いている看護師です。

 鹿児島ご出身なんですね!是非そのうち戻ってきてくださいね!

>さかたさんのコメントからは、ご自分の職業に誇りをもって取り組んでいらっしゃるのが良く分かります。

 そうですね。熱心に取り組み、改善しようと頑張っておられるのだと思います。だからこそ、色々な辛い思いをされているのだと思います。

>救急搬送時という特別な時間帯において、もっと何か患者のために手を差し伸べられたのではないかと日々苦悩され、時には周囲からの厳しい言葉にもさらされておられるのではないでしょうか。

 病院で働くものは注意しなければなりませんね。

>>病院内でほぼルーチンに点滴をし、輸液速度もめちゃくちゃな病院もあるのも知っております。
 
> ルーチンに点滴をするということがどういった内容を指されてのことか分かりかねますが、まず点滴のオーダーは医師が行います。点滴の種類はもちろんのこと、基本的には速度及び投与量・投与時間・投与経路まで指示としてあげられます。
>ただし、病棟においては例えば24時間でこの点滴を何本いって欲しいというオーダーのみが通り、投与速度が看護師の手に委ねられ輸液ポンプを使わない状況下においては、常に傍で見守るわけにもいかず、速度がまちまちになり、結果として指示量が投与されれば良しとする現状もあるでしょう。危険であるといわれれば危険ですね。

 これは良いのでは?危険になると思うのであればポンプを使う訳ですから、、、、人間は普段、血管内に時間80mlで水分が吸収されている何てことはないので、生理的に投与と考えれば、1日3回時間200mlぐらいで1回600ml落とすと言うのが良いのかも知れませんね。

>しかし、集中治療の現場においては病棟におられる患者に相対するのとは明らかに違いがでてくるのはお分かり頂けるかと思います。ひとたびICUに入れば、輸液ポンプやシリンジポンプで時間毎の投与量を確認しトータルバランスを管理する。上記した医師からのオーダーがしっかりとなければ成立しない世界であり、看護師のめちゃくちゃな速度管理等ないはずなのです。

 ですよね。看護師さん達の勤務は大変だと思います。

>また、投与経路選択に関しては病棟に関わらず看護師の手に委ねられることが多くありますが。故に看護師は速度や点滴の種類、そこからの配合変化等々を考えて、日々投与経路の選択を行っており、時に医師よりもそういった類のことに関しては詳しかったりもします。

 そうですね。それから看護師さんは医師と同じ現場にいますから、指示を受けやすい環境にあります。本当はいけない行為でも、すぐに駆けつけられるからと言う理由でお願いしている事もあります。

>どちらにせよ、我々看護師が行えることは診療の補助及び療養上の世話であり、ほとんどのことが医師の指示のもとにのみ行える行為なのです。
>昇圧剤がいっている患者が目の前でみるみる血圧が落ちている。医師に連絡がつかない。対症指示もない。このままではどう考えても大変なことになってしまうので昇圧剤の流量上げよう。もしくは、ラインをとって外液をいれよう等としてしまえば、結果がどうであれそれは違法であり、私達は裁判になったら負けてしまうのです。

 でも、こう言った事で裁判になる事はまずないでしょうね。病院でラインをとってとりあえず外液を入れる、昇圧剤を上げる、、、、全然問題ありません。救急救命士さんと違うのは「搬送」がないからです。救急救命士さんは搬送と処置の優先度を考えると言う我々病院で働いている者にはあまりない事を考えなければなりません(転送する患者さんではありえますが)。個人的には病院で救急救命士の資格を持った人が点滴や挿管などを行うのは良いと思っていますが、現場では搬送があるので、、、、、それをちゃんと判断できるのか、手技をしたいからと搬送より処置を優先する事はないのか、、、、、

>それぞれの役割があり、それぞれの専門性をもって守るべき領域があるはずです。法律に基づき国家資格として存在証明され、故に専門性を発揮できるのであれば、その行為が法律によって縛られるのもまた必然ではないでしょうか。
>少なくとも私は救命救急士の方を自分達より下であるなどと考えたこともありません。看護師にはできなくて救命救急士にできることもあるように思います。

 Rさんのような看護師さんばかりであれば良いのでしょうが、、、、確かに救急隊員の方を下に見ている病院関係者がいるのは事実です。でも看護師や医者だけが悪いのでしょうか?やはりそう思われる理由を作っている救急隊の方がおられるからだと思います。地道に努力をして行くしかないでしょう。

>現状、医療においては医師を中心として、それぞれの職がそれぞれの領域の中で専門性を発揮しながら、より患者のためになることは何かを模索し、共に連携・協力しあっていく。そして、必要であれば明確な根拠のもと互いに示しあいながら地位の向上を図っていくことが望まれるのではないかと思います。

 そうですね。殆どの事が医師からだんだん開放されてきたと言う歴史があります。救急救命士さんは別の歴史を持っています。アメリカでも時間がかかったんでしょうから、日本でパラメディックのようなレベルになるには頑張るしかないと思います。

>取り留めのない文章になってしまいましたが、こうやって何かを考え、意見を述べさせて頂く機会と場所を与えてくださったkim先生はじめ、さかたさん、そして他の方々にも感謝致します。

 こちらこそコメントありがとうございました。これからも色々とご意見頂ければ幸いです。

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さかた

コメントに対するお返事ありがとうございます。

ネットという不特定多数の方が、閲覧できる媒体ですので、先生のお考えを拝見して思った事をコメントさせていただきます。(これ以上、先生のブログページがヒートアップしてもご迷惑ですので・・・)

>私は救急救命士だから医師より挿管が下手でも良いとか思っていませんよね。挿管が上手くいかなかったらどうするのかも訓練していますよね。行うのであれば、最高の処置を行って頂きたいですし、そう出来るように訓練されていますよね。
>救急隊の方は、そこで完結するのではなく、病院へ運ぶので、多くの病院が納得する治療をして頂く必要があります。だから、色々制限があるのでしょうね

これらの先生のお考えを拝見して、正直うれしくなりました。
救急救命士を医師とは別の職種として、プロとして思ってくださって頂いているんだなと。。
医師は完ぺきでなければらない、救急救命士は完ぺきでなくても仕方がない。もしかすると偉そうな事を言っていた割には、どこかで私の中にそのような考えがあったのかもしれません。
わずか数分の限られた環境下で、主訴及び状況評価等を行い、アセスメントし、必要な処置や所見を確認し、適切な医療機関へ搬送する。
ある意味、救命士にだけしかできない業務ではないでしょうか?私はここに意味を感じ、この職種を目指し、これを生きがいとしています。従いまして、これからもプロとして職務を全うしたいと思った次第です。

救命士に対する世論や社会的な評価は分かりませんが、私としてはだれかが私たちを必要としてくれている以上、今の私にできる事を最大限にしていきたいと再確認できました。ありがとうございました。

最後に、私のポリシーを述べさせていただきます。
救急医療に携わる者の中では、常識かもしれませんが・・・

軽症そうな患者でも、必ず重篤な疾患に的を絞り、観察等を実施する。それで結果、軽症ならそれでよし。です。後輩にも言っております。救命士は診断はできません。しかし診断する意気込みで、限られた環境下で最大限の問診、観察を実施しています。
患者さんと医師との橋渡しみたいな、患者さんの代弁者みたいな、そんな存在でありたいです。

乱文失礼しました。
by さかた (2011-06-07 22:00) 

Kim

さかたさん、コメントありがとうございます。

熱い思いを語って頂きありがとうございます!

救急救命士の方達は時間との戦いです。我々も点滴を確保するのに訓練をしますが、例えば点滴の準備から終了まで5分で!(観察も含めて)なんて訓練は我々は受けません。でも救急救命士の方達はしていますよね。プロとして日本中で頑張っておられる事を知っている病院関係者はたくさんいますので、頑張りましょう!

JATECなのでも、オーバートリアージは許容しなさいと習いますよ。だから軽症な患者さんに重症者に対する処置をしてきても(点滴や気管挿管などは現時点では出来ませんが)良いと思います。

是非近い将来、もっともっと色々な事が出来るようになると良いですね!

by Kim (2011-06-07 22:31) 

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