頭部外傷患者さんにCTを行うべきか？？ [医学関連]
以前も紹介しましたが、CTはイギリスの放射線科医と物理学者が発明したもので、ノーベル賞をもらっています。またビートルズの爆発的なヒットにより研究開発費が供給されたと言う話もあります。
世界のCTは、ほとんどアメリカか日本にあり、それ以外の国ではなかなか撮像してもらえないらしいです。日本では簡単に撮像できますが、頭のCTを撮ると以下の医療費がかかります。
コンピューター断層撮影 16列以上のマルチスライス型の機器による場合 900点
電子化加算 120点
コンピューター断層診断 450点 合計1470点（普通は14700円）
3歳未満の小児（新生児を除く）だと診断料以外が1.5倍になります。
よって、何でもかんでもCTを撮ると言う訳には行きません。
また放射線被爆（現在は被ばくと表記するのが正しいそうです）の問題もあります。原子力発電所から放射能が少しずつ漏れているとか、テレビからも放射線が出ているとか、日本人は放射能に対して非常に敏感なのに、レントゲンによる被ばくは興味がないようで、結婚する時にはキリスト教徒になるのと似ていますね。
冠動脈CT1回は胸部レントゲン309枚分と言う研究もあるようです。
さて、北米ではさらに医療費がべらぼうに高いので、検査の条件はもっと高いです。
以下のような二つの基準が有名で、これらの基準に従えば、撮像しなくてすみ、例えばあとで裁判になっても、この基準に従っていたので、、、、と反論できます。
・ニューオリンズ基準
軽症頭部外傷で以下の一つでも当てはまればCTが必要である。この基準はグラスゴーコーマスケールが15点の患者にのみ適応する
1．頭痛
2．嘔吐
3．60歳以上（Older than 60 years）
4．薬物あるいはアルコール依存症
5．逆行性健忘が持続する（短期間の記憶が欠損している）
6．鎖骨よりも頭側の明らかな外傷（visible trauma）
7．けいれん
グラスゴーコーマスケールとは意識レベルの評価法の一つで、15点は満点です（最低は3点です）。意識障害のない人でCTを行うべき患者さんを見つけてくれます。グラスゴーコーマスケールが14点だったら当然CTが必要です。
もう一つはカナダです。カナダは他にも膝とか足首、首の骨のレントゲンを撮るべきかどうかと言う基準も出しています。
・カナダ頭部CTルール
軽症頭部外傷患者において、以下の一つでも認めた場合のみCTが必要である。グラスゴーコーマスケールが13−15点の患者で、意識消失が目撃され、記憶喪失や意識混濁があった場合にのみこの基準を適応する。
脳外科的介入が必要な高リスク患者
1．外傷後2時間経ってもグラスゴーコーマスケールが15未満
2．頭蓋骨の開放、または陥没骨折が疑われる
3．頭蓋底骨折の所見がある
4．2回以上の嘔吐
5．65歳以上
CTにより指摘できる脳損傷の危険がある中等度患者
6．受傷30分以上前の記憶が消失している
7．危険な受傷機転
*このルールは、外傷患者でない場合、グラスゴーコーマスケールが13未満、16歳未満、ワーファリン内服中、出血性疾患がある、明らかな開放性頭蓋骨骨折がある場合には適応されない。
頭蓋底骨折の所見とは、hemotympanum、パンダの目徴候、脳脊髄液が鼻や咽に漏れる、Battle徴候などである。
‡危険な受傷機転とは、車にはねられた歩行者、車外への放出、3フィート（約91cm）あるいは階段5段以上からの転落などである。
よって50歳の健康な男性が転んで頭を打っただけで、頭痛も嘔吐もない場合、CTは原則不要です。12歳の子供が友達に頭を殴られたけれど、頭痛も嘔吐もなく元気な場合には、やはり不要です（が、だいたいご両親の希望により撮像となります）。
何でもかんでも撮ってくれたら良いじゃないか！日本はCTたくさんあるんだし、医療費だって対GDP比は先進国中最低なんだろ！！と言われる方がいるかもしれません（まだ出会った事ありませんが）。おっしゃる通りですが、日本の医療費は高いと政府は考えています。国際比較はどうでも良いんです。このまま行くと、医療費の自己負担が増え、保険料も値上がりします。そのうちCTは実費で、風邪薬や湿布は自費、と言う風になる可能性もあります。
自分だけCT何とか撮ってもらえませんか？と言う事が、医療費の高騰に少しですが、つながっていると考えてはいかがでしょうか？
医療費が高くなった時に納得できますか？？
こういった事を広めて行き、過剰な検査を少なくしていく努力を我々医療従事者は進めています。患者さんもご理解いただければと思います。
どっちの基準が有用かと言うお話を次回させて頂きます。
ちなみに、病院にかかると2700円の初診料が取られます（話を聞いただけでも）。
通常の診察時間外だと、以下のお金が追加されます。
時間外（休日でも深夜でもない時間）だと850円、休日だと2500円、深夜（夜10時から朝6時まで）だと4800円
よって夜11時に受診して頭のCTを撮れ！と言うと、2700＋4800＋14700＋1100（時間外加算）＝23300円の医療費がかかります。普通は3割負担なので、6990円が自己負担です。16310円他の人に負担してもらっていると考えられます。うるさく言う人にはこの計算を見てもらおうかと思う事もあります。
世界のCTは、ほとんどアメリカか日本にあり、それ以外の国ではなかなか撮像してもらえないらしいです。日本では簡単に撮像できますが、頭のCTを撮ると以下の医療費がかかります。
コンピューター断層撮影 16列以上のマルチスライス型の機器による場合 900点
電子化加算 120点
コンピューター断層診断 450点 合計1470点（普通は14700円）
3歳未満の小児（新生児を除く）だと診断料以外が1.5倍になります。
よって、何でもかんでもCTを撮ると言う訳には行きません。
また放射線被爆（現在は被ばくと表記するのが正しいそうです）の問題もあります。原子力発電所から放射能が少しずつ漏れているとか、テレビからも放射線が出ているとか、日本人は放射能に対して非常に敏感なのに、レントゲンによる被ばくは興味がないようで、結婚する時にはキリスト教徒になるのと似ていますね。
冠動脈CT1回は胸部レントゲン309枚分と言う研究もあるようです。
さて、北米ではさらに医療費がべらぼうに高いので、検査の条件はもっと高いです。
以下のような二つの基準が有名で、これらの基準に従えば、撮像しなくてすみ、例えばあとで裁判になっても、この基準に従っていたので、、、、と反論できます。
・ニューオリンズ基準
軽症頭部外傷で以下の一つでも当てはまればCTが必要である。この基準はグラスゴーコーマスケールが15点の患者にのみ適応する
1．頭痛
2．嘔吐
3．60歳以上（Older than 60 years）
4．薬物あるいはアルコール依存症
5．逆行性健忘が持続する（短期間の記憶が欠損している）
6．鎖骨よりも頭側の明らかな外傷（visible trauma）
7．けいれん
グラスゴーコーマスケールとは意識レベルの評価法の一つで、15点は満点です（最低は3点です）。意識障害のない人でCTを行うべき患者さんを見つけてくれます。グラスゴーコーマスケールが14点だったら当然CTが必要です。
もう一つはカナダです。カナダは他にも膝とか足首、首の骨のレントゲンを撮るべきかどうかと言う基準も出しています。
・カナダ頭部CTルール
軽症頭部外傷患者において、以下の一つでも認めた場合のみCTが必要である。グラスゴーコーマスケールが13−15点の患者で、意識消失が目撃され、記憶喪失や意識混濁があった場合にのみこの基準を適応する。
脳外科的介入が必要な高リスク患者
1．外傷後2時間経ってもグラスゴーコーマスケールが15未満
2．頭蓋骨の開放、または陥没骨折が疑われる
3．頭蓋底骨折の所見がある
4．2回以上の嘔吐
5．65歳以上
CTにより指摘できる脳損傷の危険がある中等度患者
6．受傷30分以上前の記憶が消失している
7．危険な受傷機転
*このルールは、外傷患者でない場合、グラスゴーコーマスケールが13未満、16歳未満、ワーファリン内服中、出血性疾患がある、明らかな開放性頭蓋骨骨折がある場合には適応されない。
頭蓋底骨折の所見とは、hemotympanum、パンダの目徴候、脳脊髄液が鼻や咽に漏れる、Battle徴候などである。
‡危険な受傷機転とは、車にはねられた歩行者、車外への放出、3フィート（約91cm）あるいは階段5段以上からの転落などである。
よって50歳の健康な男性が転んで頭を打っただけで、頭痛も嘔吐もない場合、CTは原則不要です。12歳の子供が友達に頭を殴られたけれど、頭痛も嘔吐もなく元気な場合には、やはり不要です（が、だいたいご両親の希望により撮像となります）。
何でもかんでも撮ってくれたら良いじゃないか！日本はCTたくさんあるんだし、医療費だって対GDP比は先進国中最低なんだろ！！と言われる方がいるかもしれません（まだ出会った事ありませんが）。おっしゃる通りですが、日本の医療費は高いと政府は考えています。国際比較はどうでも良いんです。このまま行くと、医療費の自己負担が増え、保険料も値上がりします。そのうちCTは実費で、風邪薬や湿布は自費、と言う風になる可能性もあります。
自分だけCT何とか撮ってもらえませんか？と言う事が、医療費の高騰に少しですが、つながっていると考えてはいかがでしょうか？
医療費が高くなった時に納得できますか？？
こういった事を広めて行き、過剰な検査を少なくしていく努力を我々医療従事者は進めています。患者さんもご理解いただければと思います。
どっちの基準が有用かと言うお話を次回させて頂きます。
ちなみに、病院にかかると2700円の初診料が取られます（話を聞いただけでも）。
通常の診察時間外だと、以下のお金が追加されます。
時間外（休日でも深夜でもない時間）だと850円、休日だと2500円、深夜（夜10時から朝6時まで）だと4800円
よって夜11時に受診して頭のCTを撮れ！と言うと、2700＋4800＋14700＋1100（時間外加算）＝23300円の医療費がかかります。普通は3割負担なので、6990円が自己負担です。16310円他の人に負担してもらっていると考えられます。うるさく言う人にはこの計算を見てもらおうかと思う事もあります。
まさにその通りですね。マクロな視点を持って実践していきたいですよね。
ただ患者さんという立場に立つと、ミクロな視点でしか物を考えられなくなる可能性は高く、自分は保険料払っているんだから撮って欲しいと考える人もいます。さらには病院が経済的および防衛医療的理由からCTを撮ろうとすることも考えられます。
それでも夜間診察を受けた患者さんが3割負担でも、「なんでこんなに高いんだ！」といって怒って、帰る光景をたまに見かけます・・・。
by ask (2011-01-15 04:04)
askさん、コメント＆nice!ありがとうございます。
抗生物質やタミフル等もそうですよね。自分だけ良くてもいけないんです。が、最近は自分だけはと言う人が多いですよね。
日本に医療費はそれでも安いんですとお話するしかないですね。
by Kim (2011-01-15 06:58)
最近は不況の為か。
精査を依頼で来て、じゃあMRI取って採血してなどと話していると、
「いくら掛かりますか？」って訊かれることが多いです。
「持ち合せがなくて」と理由を述べられる方が多いです。
電子カルテにオーダーを入れると、
スーパーのレジの表示みたいに「ただ今の金額」が表示されるようになるといいと思います。
「あ、じゃあ、その検査いいです」
「その薬を一日分減らしてください」とか、注文を受けられます。
まあ、日本の場合、料金が患者さんの選択の判断基準にあまり影響していないというのは、良い事ではあるとは思います。
by へびぱく (2011-01-15 09:34)
へびぱくさん、コメントありがとうございます。
そうですね。お金がないからと検査はいらないと言う人もいますね。
電子カルテに金額が表示されるのは良いと思います！！
by Kim (2011-01-15 11:04)
仰るとおりですね。
本当は本当に必要な医療が無料になるように、
健康体力作りを大切にする社会に移行する方が
大切だと思います。
健康運動指導士の地位を上げねば！！
by tsworking (2011-01-15 23:26)
tsworkingさん、コメント＆nice!ありがとうございます。
そうですね。おっしゃる通り、病気にならないのが一番です。普通ストレスがかかると人間は走って逃げたりしたのですが、現代の人間はそう言う反応をしませんので動脈硬化が進むと言う話も聞いた事があります。
運動を普段からするのは大切な事ですよね！
と言う私は運動していませんが(^.^)。
by Kim (2011-01-15 23:50)
kim先生こんばんは
本当に医療費は高いですね。
1割負担のときはそう感じなかったのですが、2割･3割となってくると負担も大きくなります。
負担率が少ない頃は病院にあまり縁が無かったのに、最近は・・・。
以前、背中に突然身動き出来ないほどの激痛があって、救急外来に連れて行かれました。
採血をしてＣＴをとり、点滴をしているうちに楽になってきたのですが、深夜の時間帯だったので高いだろうなと思ってはいたものの、点数間違ったわけじゃないだろうなと、疑うほどの金額でした。
「解離性大動脈瘤」の疑いだったらしいですが、こんな田舎なら危なかったかも。
医療費が高かった！程度で済んでよかったです。
by andante (2011-01-16 00:02)
andanteさん、コメントありがとうございます。
本来はイギリスのように無料であるべきです。が、良い人ばかりではないので、タダだと大した事なくてもかかったり、風邪薬を大量にもらって行って人に売ったりする人がいます。だから仕方なく有料になっているんだと思います。
緊急の必要性がなかったら6000円近く余分に払う制度があって、導入している病院もありますが、大変恥ずかしい事だと多くの国民が感じなければいけないと思います。
andanteさんは大きな事がなくて良かったですね。
by Kim (2011-01-17 09:00)
kim先生 ご判断をお願いします。自転車で転倒して頭部打撲したのですが、気になってるせいか時々なんですが、ズキズキと頭痛を感じます。検査は必要でしょうか？
by なな (2012-05-14 12:09)
ななさん、コメントありがとうございます。
頭痛が続くと心配ですよね。是非専門医（脳神経外科であると思います）を受診しましょう。検査が必要かどうかは専門医が決めてくれます。
検査は診断の補助をするもので、それが最初に来る訳ではありませんし、全てでもありません。検査の不正確さについては何度か書いています。
漫画「ブラックジャック」の最初の頃の話に、色々な理由で整形手術を受けさせられた息子が、母親に自分はあなたの息子です！と示す時に、はさみの使い方を見せる（服の職人だったんです）というシーンがあります。それで息子であると認識するんですが、、、、、出生証明書、整形手術を受けた証明書、遺伝子の解析、、、、、必要ないですよね。もちろん必要になることもあるのですが、それはその時の判断で、、、、
by Kim (2012-05-15 11:14)