低体温は死亡と判断してはいけません [医学関連]
こんなニュースが出ています。
簡単に言えば、低体温状態の患者さんが外で倒れていて、呼吸が停止し、死後硬直があると間違えて病院へ搬送しなかったと言う事です。
低体温の患者さんの診療は難しいです。人間は36度前後の体温です。真夏でも外で寝たら低体温になる可能性があります。
二次救命処置の講習会では,心停止の原因として色々考えましょうと教えられます。HとTとか、ABCDEFGHIJKKとか色々ありますが、どちらも同じです。
その中に低体温があります。軽度の低体温は、体温を測らないと絶対に見つかりません。蘇生中に体温はどうだろう?と思い出さないと絶対に治療できないのです。低体温の治療は簡単です。温めて体温を上げれば良いんです(と言っても色々難しいのですが)。
よって心停止の場合には常に低体温を考えなければなりません。体温を上げれば心臓が動き出すかも知れないのですから!!
しかし、心停止して時間がたった場合にも、同じように低体温となります。今回の事例ではこちらだと判断してしまったのでしょう。実際の現場がどうだったのか分かりませんが、原則だけ言えば,低体温の人を死亡と判断するのは駄目でしょうね。蘇生を行って病院へ搬送すべきでした。
救急の鉄則があります。例え心停止であっても、体温が低い人は,正常体温になるまでは生きていると考えなさいと。
AHAのガイドライン2005(日本語版)P.175には以下のようにあります。
「まず呼吸を評価し、その後30〜45秒間にわたり脈拍を評価して,呼吸停止や無脈性心停止あるいはCPRを要するほどの重度の徐脈であるかを確認する。」
普通の脈拍の評価時間は5〜10秒です。この長さ!!それほど難しいし、低体温時には脈が遅くなっている可能性が高いという事なんでしょう。
P.176には「低温に長時間さらされて死体にみえる場合でも、ほぼ正常な深部体温に加温するまで死亡とみなすべきではないと考える医師もいる。」とあります。
救急蘇生法の指針<2005>医療従事者用P.80には「病院外では、明らかな死体徴候がある場合や凍結のためにCPRができない場合を除いて、蘇生を試みる」とあります。
ヨーロッパ蘇生協議会のガイドラインでも「患者が再加温されるか核温を上昇させようとする試みに失敗するまで、死亡を確定しない。蘇生の延長が必要となるかもしれない。院外においては患者が致命的な外傷を受けているか、体が完全に凍り付いて蘇生が試みられない場合を除いて、蘇生を差し控えない」と述べています。
ちなみに、人が死亡したと診断出来るのは医師のみです。必ず医師の診断が必要です。何故なら死の診断はとても難しいからです。救急隊の方には死の判定(診断ではありません)が許されているのみで、私の住む地域では、死後硬直、死斑、その他色々全てを満たした場合にのみ死亡と判定して良いと決められています。今回は死斑を見なかったと言う事らしいですから、いけませんね。謙虚になって活動をして頂きたいです。
以前北海道でも同じようなことがありましたね。こちらのブログをご覧下さい。
こちらの記事にある事が本当であれば、反省して頂きたいです。
ただ、現場の事は分かりませんので、、、、、ちょっと養護すれば、もし社会死でないと判断した場合には、どこかへ搬送しなければならないのですが、こう言った患者さんを受け入れてくれる病院はなかなかなく、苦労するのは分かっているので、、、、死斑はいいんじゃないの?もう亡くなっているでしょ、、、、となったのかも知れません。何故なら消防の方達は非常に厳しい教育を受けておられますので、必要とされている手順を省略すると言う事が信じられないのですが、、、、
簡単に言えば、低体温状態の患者さんが外で倒れていて、呼吸が停止し、死後硬直があると間違えて病院へ搬送しなかったと言う事です。
低体温の患者さんの診療は難しいです。人間は36度前後の体温です。真夏でも外で寝たら低体温になる可能性があります。
二次救命処置の講習会では,心停止の原因として色々考えましょうと教えられます。HとTとか、ABCDEFGHIJKKとか色々ありますが、どちらも同じです。
その中に低体温があります。軽度の低体温は、体温を測らないと絶対に見つかりません。蘇生中に体温はどうだろう?と思い出さないと絶対に治療できないのです。低体温の治療は簡単です。温めて体温を上げれば良いんです(と言っても色々難しいのですが)。
よって心停止の場合には常に低体温を考えなければなりません。体温を上げれば心臓が動き出すかも知れないのですから!!
しかし、心停止して時間がたった場合にも、同じように低体温となります。今回の事例ではこちらだと判断してしまったのでしょう。実際の現場がどうだったのか分かりませんが、原則だけ言えば,低体温の人を死亡と判断するのは駄目でしょうね。蘇生を行って病院へ搬送すべきでした。
救急の鉄則があります。例え心停止であっても、体温が低い人は,正常体温になるまでは生きていると考えなさいと。
AHAのガイドライン2005(日本語版)P.175には以下のようにあります。
「まず呼吸を評価し、その後30〜45秒間にわたり脈拍を評価して,呼吸停止や無脈性心停止あるいはCPRを要するほどの重度の徐脈であるかを確認する。」
普通の脈拍の評価時間は5〜10秒です。この長さ!!それほど難しいし、低体温時には脈が遅くなっている可能性が高いという事なんでしょう。
P.176には「低温に長時間さらされて死体にみえる場合でも、ほぼ正常な深部体温に加温するまで死亡とみなすべきではないと考える医師もいる。」とあります。
救急蘇生法の指針<2005>医療従事者用P.80には「病院外では、明らかな死体徴候がある場合や凍結のためにCPRができない場合を除いて、蘇生を試みる」とあります。
ヨーロッパ蘇生協議会のガイドラインでも「患者が再加温されるか核温を上昇させようとする試みに失敗するまで、死亡を確定しない。蘇生の延長が必要となるかもしれない。院外においては患者が致命的な外傷を受けているか、体が完全に凍り付いて蘇生が試みられない場合を除いて、蘇生を差し控えない」と述べています。
ちなみに、人が死亡したと診断出来るのは医師のみです。必ず医師の診断が必要です。何故なら死の診断はとても難しいからです。救急隊の方には死の判定(診断ではありません)が許されているのみで、私の住む地域では、死後硬直、死斑、その他色々全てを満たした場合にのみ死亡と判定して良いと決められています。今回は死斑を見なかったと言う事らしいですから、いけませんね。謙虚になって活動をして頂きたいです。
以前北海道でも同じようなことがありましたね。こちらのブログをご覧下さい。
こちらの記事にある事が本当であれば、反省して頂きたいです。
ただ、現場の事は分かりませんので、、、、、ちょっと養護すれば、もし社会死でないと判断した場合には、どこかへ搬送しなければならないのですが、こう言った患者さんを受け入れてくれる病院はなかなかなく、苦労するのは分かっているので、、、、死斑はいいんじゃないの?もう亡くなっているでしょ、、、、となったのかも知れません。何故なら消防の方達は非常に厳しい教育を受けておられますので、必要とされている手順を省略すると言う事が信じられないのですが、、、、
おっしゃるとおりですね。
後医は名医になりますので、極端に批判はできませんが・・・
やはり、救急隊としてはしっかりと活動基準を厳守してほしいものです。
by パラパラ (2010-02-12 10:04)
バラバラさん、コメントありがとうございます。
こちらの基準を調べました。
1.意識レベル300
2.呼吸が全く感じられない
3.総頚動脈で,脈拍が全く触知できない
4.瞳孔散大、対光反射なし
5.体温が感じられず,冷感あり
6.死後硬直、または死斑が認められる
と言うのでした。すべてを満たした時にのみ社会死とすると言う事です。これに従えば、今回の患者さんは社会死となるかも知れません。6は両方とした方が良いかも知れませんね。
何でも病院に搬送されても困ることはもちろんなのですが、、、、
by Kim (2010-02-12 10:32)
低体温の扱いと処置は大変難しいですね.
受け入れる病院の側もしっかりと準備が必要なので
いろいろな事案で勉強したいと思います.
by yangt3 (2010-02-12 11:04)
yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます。
これは監察医制度の問題でもありますよね。すぐに医師が現場へ向かい、死亡とするか、病院へ搬送するか、、、、判断できれば、救急隊の方の負担は減ると思います。
by Kim (2010-02-12 11:21)
映画みたいなことが実際に日本で起きてる事に驚きです!一般人な質問ですが、人間は低体温になったらどれだけ生きてられますか?
by はるかけこ (2010-02-12 12:14)
はるかけこさん、コメントありがとうございます。
ACLSリソーステキストのP.289-290には以下のようにあります。
4.44度(華氏40度)の水では1時間後に50%の人が死亡するそうです。
長時間水没していて助かったのは、5度以下(華氏41度)の場合だそうです。
またP.303によれば、以下の場合だと死亡率が100%に達するそうです。
水没時間が25分以上
蘇生時間が25分以上
救急部到着時に心停止
勉強になりました。参考になれば幸いです。
by Kim (2010-02-12 13:15)
Kim先生、わかりやすく勉強になりました。再度、ACLSリソーステキストで復習、再確認し勉強する意欲がわきます。ざーとテキスト2回読みましたが、難しいところはほとんどぼーっと読み流しすだけでした。
by ルックアップ (2010-02-12 14:18)
ルックアップさん、コメントありがとうございます。
リソーステキストは私も買ったのですが、全然読めていません。こう言った機会読むようにしています。
色々なことを勉強しなければならないので大変ですが、仕事ですから。
by Kim (2010-02-12 14:43)
1.意識レベル300
2.呼吸が全く感じられない
3.総頚動脈で,脈拍が全く触知できない
4.瞳孔散大、対光反射なし
この4つは救急隊が扱うCPA事案のほとんどが当てはまります。
たとえ冷感があっても救急隊は当然CPRを実施します。
死斑及び死後硬直があれば、さすがに不搬送としますが、やはり不搬送は抵抗があります。
救急救命士のテキストに以下の文面が記載されています。
現場の死亡判断は以下のような明らかな場合に限られる。
1体幹、頭部の切断
2硬直や死斑のある者
3腐敗
4医師が死亡していると診断した場合
なお、上述のような明らかな死亡の兆候がない場合はCPRに着手して医療機関に搬送し、判断を医師に委ねるべきである
また、最近発刊された救急隊向けの法律辞典にも、今回のような事案に対する法的な問題が記載されています。
今回の状況は全く分かりませんが、やはりいつでも低体温は頭に入れないといけませんね。
しかし・・・死亡と判断するときに救急隊は心電図は記録しなかったのでしょうか・・・
何らかの波形は確認できたはずですが・・・(かなりの徐脈だったかも・・・)
かりに心静止だったとしてもそのまま何もせず警察で蘇生なんか医学的にありえないですよね・・・??
by パラパラ (2010-02-12 14:53)
パラパラさん、コメントありがとうございます。
そうです!救急救命士さんのテキストが見たかったんです!ありがとうございます!!
埼玉県ではこの事件をうけて心電図をとる事に、、、とありましたが、するのが普通なのでしょうか?
by Kim (2010-02-12 15:20)
心電図装着は必ず実施する・・・というのは地域MCの違いもあるでしょうから一概には言えませんが。。。
私個人の考えとしては必ず心電図は装着します。
医師ではない救急隊としては客観的証拠にもなりますので必ず記録し保存します。
ですから、埼玉県ではこの事件をうけて心電図をとる事に、、、というのはにわかに信じられません。
この事案でもし心電図を記録していれば確実にCPRをしていたでしょうね。
by パラパラ (2010-02-12 15:30)
パラパラさん、コメントありがとうございます。
確かにMCで色々でしょうね。どちらにしても間違っていれば訂正して、また考えて行けば良いですね。
何より、今回は患者さんが死んでしまった訳ではないので、、、
by Kim (2010-02-12 16:03)
>この事案でもし心電図を記録していれば確実にCPRをしていたでしょうね。
すみません。私の勘違いです
訂正します。
by パラパラ (2010-02-12 17:25)
パラパラさん、コメントありがとうございます。
確かに、心電図をつけようと思うのであれば、CPRして病院へ運ぶ方が良さそうですね。
色々と難しいですね!
by Kim (2010-02-12 17:48)
救急救命士だからこそ、この事件は厳しく対処するべきだと思います。
by ルックアップ (2010-02-12 18:41)
ルックアップさん、コメントありがとうございます。
どんな原因でこうなったかが分かりませんので、何とも言い難いですが、決まりを忘れていたとか、意図的に省略したのであれば、厳重注意だと思います。
が、そんな事ではないと信じたいですが、、、、
by Kim (2010-02-12 19:06)
はじめまして、私の地区では、必ず心電図(除細動器による)波形確認
とその記録を取ります。
それが普通だと思っておりましたが、北見の件以来、今回は埼玉でこのような事例が起こってしまいましたが・・・
その辺は、消防庁からも通達があり徹底されているものだと思っておりましたので、非常に残念に感じました。
by k-f-d (2010-02-18 22:46)
k-f-dさん、コメントありがとうございます。
徹底すると言うのは口で言うと簡単ですが、なかなか出来ないのでしょうね。公務員の飲酒運転と同じと言ったら怒られるでしょうか?
by Kim (2010-02-19 08:22)