胃潰瘍と骨粗鬆症 [整形外科研修]
今回は珍しくアカデミックな話を、、、、
PPI(proton pump inhibitor:ピーピーアイ)と言う薬があります。これは胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎といった胃酸が関係する病気の治療薬です。最も効果のあるものの一つです。
胃酸は細胞膜にあるプロトンポンプというのが分泌します。胃酸分泌の最終段階をブロックするので強力な胃酸分泌阻害作用があるのです。
今回はその薬と骨折の関係についてお話しましょう。
骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気を骨粗しょう症と呼びます。これは、薬の副作用として起こる場合もあり、それを薬剤性骨粗鬆症と言います。原因となる薬剤として、以下のようなものが有名です。
ステロイド
メソトレキサート
ヘパリン製剤
ワーファリン
抗てんかん薬
リチウム製剤
タモキシフェン
アロマターゼ阻害薬
性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬
アロマターゼ阻害薬
その他に、最初にお話したPPIも骨が折れやすくなるという報告があります。2006年にYangらが報告しています(JAMA 296:2947:2006、なんと全文が無料で読めます)。PPI長期投与により、大腿骨頚部骨折のリスクが1年で1.22倍、4年で1.59倍になるとのことです。また、1日1.75錠以上飲んでいると2.65倍になるということです。
しかし、この論文には色々問題点が指摘されています。例えば、1000例中1.8だったものが4に増えたといっても、、、、増えたといえるのか??と言う点です。0.18%が0.4%になったということで、NNHにすると1÷(0.004−0.0018)=251程度であり、PPIを飲んでいる人250人のうち1人がPPIを飲んでいるために骨折するということで、あまり意味がありません。他にもデータに問題があることが指摘されています。
Kayeらが2008年に同じデータベースを用いて、データをきちんと分類して再検討した(Pharmacotherapy28:951:2008)ら差は認めませんでした。
また、Yuらによれば(Calcif tissue int 83:251:2008)、大腿骨骨折は増えないが、女性とカルシウム補給をしていない男性では、非椎体の骨折が増えるとされています。
また、PPIを服用する患者さんは、もともと骨密度が低い人が多いそうです。
しかし、PPIにより骨粗鬆症となる可能性が理論上はあります。例えば以下の二つです。
PPI投与により消化館内のpHが上昇し、カルシウム吸収を阻害する可能性があります。
プロトンポンプは全身の細胞にありますので、PPIにより骨を作る細胞の機能を低下させる可能性があります。
しかし、骨吸収マーカーであるNTXの有意な低下がある(太田哲生ら新薬と臨床57:1341:2008)そうで、骨吸収抑制作用があります。今調べた範囲では、破骨細胞と言う骨を壊す細胞にはプロトンポンプがあるそうです(骨は常に壊され、作られているのです)。
以上よりPPIが骨粗鬆症を発生しやすいとは言えないというのが今の段階での考えです。が、長期にPPIを投与する予定の患者さんでは、カルシウム補給を考慮しましょう。
まじめな話は疲れますね〜。
PPI(proton pump inhibitor:ピーピーアイ)と言う薬があります。これは胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎といった胃酸が関係する病気の治療薬です。最も効果のあるものの一つです。
胃酸は細胞膜にあるプロトンポンプというのが分泌します。胃酸分泌の最終段階をブロックするので強力な胃酸分泌阻害作用があるのです。
今回はその薬と骨折の関係についてお話しましょう。
骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気を骨粗しょう症と呼びます。これは、薬の副作用として起こる場合もあり、それを薬剤性骨粗鬆症と言います。原因となる薬剤として、以下のようなものが有名です。
ステロイド
メソトレキサート
ヘパリン製剤
ワーファリン
抗てんかん薬
リチウム製剤
タモキシフェン
アロマターゼ阻害薬
性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬
アロマターゼ阻害薬
その他に、最初にお話したPPIも骨が折れやすくなるという報告があります。2006年にYangらが報告しています(JAMA 296:2947:2006、なんと全文が無料で読めます)。PPI長期投与により、大腿骨頚部骨折のリスクが1年で1.22倍、4年で1.59倍になるとのことです。また、1日1.75錠以上飲んでいると2.65倍になるということです。
しかし、この論文には色々問題点が指摘されています。例えば、1000例中1.8だったものが4に増えたといっても、、、、増えたといえるのか??と言う点です。0.18%が0.4%になったということで、NNHにすると1÷(0.004−0.0018)=251程度であり、PPIを飲んでいる人250人のうち1人がPPIを飲んでいるために骨折するということで、あまり意味がありません。他にもデータに問題があることが指摘されています。
Kayeらが2008年に同じデータベースを用いて、データをきちんと分類して再検討した(Pharmacotherapy28:951:2008)ら差は認めませんでした。
また、Yuらによれば(Calcif tissue int 83:251:2008)、大腿骨骨折は増えないが、女性とカルシウム補給をしていない男性では、非椎体の骨折が増えるとされています。
また、PPIを服用する患者さんは、もともと骨密度が低い人が多いそうです。
しかし、PPIにより骨粗鬆症となる可能性が理論上はあります。例えば以下の二つです。
PPI投与により消化館内のpHが上昇し、カルシウム吸収を阻害する可能性があります。
プロトンポンプは全身の細胞にありますので、PPIにより骨を作る細胞の機能を低下させる可能性があります。
しかし、骨吸収マーカーであるNTXの有意な低下がある(太田哲生ら新薬と臨床57:1341:2008)そうで、骨吸収抑制作用があります。今調べた範囲では、破骨細胞と言う骨を壊す細胞にはプロトンポンプがあるそうです(骨は常に壊され、作られているのです)。
以上よりPPIが骨粗鬆症を発生しやすいとは言えないというのが今の段階での考えです。が、長期にPPIを投与する予定の患者さんでは、カルシウム補給を考慮しましょう。
まじめな話は疲れますね〜。
PPIについてはクロピドグレル(プラビックス)との
相性が悪いとかいわれています.
よい薬ですが使い方は慎重に、ということですね.
by yangt3 (2009-11-16 10:47)
yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます!!
色々な薬との相互作用もあるんですね。難しいですね。循環器ではプラビックス良く使うでしょうから、、、、
by Kim (2009-11-16 11:19)
今、まさに飲んでいます~~~ぎえ~~~。
胃潰瘍をやっちゃいまして~~~。
怖いです。まだ若いからといって、油断は禁物ですね。
ありがとうございます。
by Ceiko (2009-11-16 13:37)
Ceikoさん、コメント&nice!ありがとうございます。
若い人は大丈夫ですよ。またこの記事で紹介したことは、長期投与のデータです。通常の胃潰瘍でしたら2ヶ月以上飲む事は日本では許可されていません(自費ならば良いですが)。だから安心してきちんと飲んで頂ければ幸いです。
お年寄りはPPIを超期間飲んでいる人が結構います。私は出来るだけH2ブロッカーに変えるようにしているのですが、半分以上の人に、前の薬の方が調子が良かったと言われてしまう事が多いです。
by Kim (2009-11-16 13:48)
kim先生今晩は
この中の薬、3種類はかって服用していました。
ステロイドは多い時で30mm処方されていて、ムーンフェイスでひどい顔をしていました。
おまけに感染力は強くなるし、傷は治りにくいし散々でした。
体調不良の割りにやたら食欲が出て、あっという間に10k体重増加です(^_^)。
水分脂肪分を蓄えると聞きましたが、まさに身を持って体験しました。(今は戻りました)
職場の健診で血糖値が高く、糖の負荷検査を受けるとステロイドの副作用でした。
徐々に薬の量は減って今は飲んでいませんが、やはり病気によって長年飲み続けていた人は、気の毒なほど骨に影響が出ますね。
私も気になって骨粗鬆症の検査を受けましたが、年齢以上に骨は丈夫そうです。
でも、外見からはわからないので、残念ながら自慢のしようがありません。
by andante (2009-11-17 01:28)
andanteさん、コメントありがとうございます。
ステロイドは骨をもろくしますのでできれば飲まないようにしたいですが、治療しなければならない病気があれば必要です。
医療の現場では天秤にかけて判断を行っています。単純な判断ではないのです。
by Kim (2009-11-17 08:22)