検査は100%ではありません [医学関連]
インフルエンザの検査が陰性だったのに、やっぱりインフルエンザだったと言う事が最近報道されていて、何で!!と思う方もおられると思います。
今回はこの事について考えてみましょう。
大事な事は、100%正しい事はほとんどないと言う事です。唯一あるのは、人間はいつか必ず死ぬと言う事です。
学生時代に化学の実験で、特定の物質に反応する試薬を入れ、ある検体にどんな物質が含まれているか調べると言うのがあったと思います。必ず分かるはずなのに、、、、入っているはずの物質に対する試薬で反応しない事があります。
同じように人間の身体を検査しても検査が反応しない事があります。その事を皆さん良く理解して頂きたいです。
例えば、海外旅行から帰って来て熱が出ると言う患者さんが来院されます。診察して、インフルエンザの可能性が高いと考えます。が、熱が出る病気は私の知らない物も沢山あり、下手をすれば何千、何万種類もあります。よって、診察の段階ではインフルエンザの可能性が例えば80%ぐらいとしか言えないでしょう。これを事前確率と言います。
インフルエンザの診断をもう少し確実にするためには、検査を行います。インフルエンザは迅速診断キットと言う15分程度で結果の分かる検査があるので、それを行います。
検査の正確さは、感度、特異度と言うもので表します。感度とは、病気である人を病気であると診断する割合で、特異度とは病気でない人を病気でないと診断する割合です。病気であると言うのはどうやって調べるのかと言うと、、、、色々です。こちらによれば、別の検査によってインフルエンザウイルスがいると判定された検体(これが患者さんでない事に注意!本当はウイルスがいる=感染ではありません)で調べた感度、特異度は、共に90%以上とされています。
例えば、あらかじめインフルエンザであると分かっているのに、10人中1人は見逃しますし、インフルエンザでないと分かっているのに、検査をすると10人中1人はインフルエンザであると診断されてしまうのです。
え〜、そんな精度悪いの?と思われると思いますが、感度、特異度が90%以上と言うのは非常に素晴らしい検査です。医療で用いられる検査と言うのはそんなものなのです。ちょっと打撲してレントゲンを撮って欲しいと言う人が沢山おられますが、レントゲンは見る人にもよりますが、もっと精度は悪いです。だからレントゲンが異常なかったから、、、、と安心するのは好ましくありません。
脱線してしまいましたが、この様な検査を行い、インフルエンザ陽性と出たとします。計算がややこしいのですが、やってみます。
まず確率をオッズ比と言うのに直します。オッズ比は、起こりうる確率÷起こりえない確率ですので、80%の事前確率は、0.8÷(1-0.8)=4です。
検査が陽性の場合には、陽性尤度比と言うのをかけます。これは、感度÷(1-特異度)です。両方とも0.9と考えると、0.9÷0.1で9です。4×9で36ですので、事後オッズは36で、これを確率に直すと、、、、オッズ÷(1+オッズ)ですので、97.3%となります。3%程度はインフルエンザではないのです。
逆にインフルエンザではないと言う結果が出たとしましょう。この場合には陰性尤度比というのをかけます。これは、(1-感度)÷特異度です。9分の1ですね。事前オッズ4×1÷9=9分の4です。
事後オッズは、30.7%になります。インフルエンザが陰性と出ても、可能性は30%も残されています!!
よって100%正しい診断を付ける事はほぼ不可能です。検疫で見逃すと言う事も十分あります。事前確率が高くてもこれですから、確率が低い場合には、、、、、、計算してみて下さい。
裁判ではこの場合無罪にする事が出来ますが、医療は難しいです。これについては別記事を、、、、
今回はこの事について考えてみましょう。
大事な事は、100%正しい事はほとんどないと言う事です。唯一あるのは、人間はいつか必ず死ぬと言う事です。
学生時代に化学の実験で、特定の物質に反応する試薬を入れ、ある検体にどんな物質が含まれているか調べると言うのがあったと思います。必ず分かるはずなのに、、、、入っているはずの物質に対する試薬で反応しない事があります。
同じように人間の身体を検査しても検査が反応しない事があります。その事を皆さん良く理解して頂きたいです。
例えば、海外旅行から帰って来て熱が出ると言う患者さんが来院されます。診察して、インフルエンザの可能性が高いと考えます。が、熱が出る病気は私の知らない物も沢山あり、下手をすれば何千、何万種類もあります。よって、診察の段階ではインフルエンザの可能性が例えば80%ぐらいとしか言えないでしょう。これを事前確率と言います。
インフルエンザの診断をもう少し確実にするためには、検査を行います。インフルエンザは迅速診断キットと言う15分程度で結果の分かる検査があるので、それを行います。
検査の正確さは、感度、特異度と言うもので表します。感度とは、病気である人を病気であると診断する割合で、特異度とは病気でない人を病気でないと診断する割合です。病気であると言うのはどうやって調べるのかと言うと、、、、色々です。こちらによれば、別の検査によってインフルエンザウイルスがいると判定された検体(これが患者さんでない事に注意!本当はウイルスがいる=感染ではありません)で調べた感度、特異度は、共に90%以上とされています。
例えば、あらかじめインフルエンザであると分かっているのに、10人中1人は見逃しますし、インフルエンザでないと分かっているのに、検査をすると10人中1人はインフルエンザであると診断されてしまうのです。
え〜、そんな精度悪いの?と思われると思いますが、感度、特異度が90%以上と言うのは非常に素晴らしい検査です。医療で用いられる検査と言うのはそんなものなのです。ちょっと打撲してレントゲンを撮って欲しいと言う人が沢山おられますが、レントゲンは見る人にもよりますが、もっと精度は悪いです。だからレントゲンが異常なかったから、、、、と安心するのは好ましくありません。
脱線してしまいましたが、この様な検査を行い、インフルエンザ陽性と出たとします。計算がややこしいのですが、やってみます。
まず確率をオッズ比と言うのに直します。オッズ比は、起こりうる確率÷起こりえない確率ですので、80%の事前確率は、0.8÷(1-0.8)=4です。
検査が陽性の場合には、陽性尤度比と言うのをかけます。これは、感度÷(1-特異度)です。両方とも0.9と考えると、0.9÷0.1で9です。4×9で36ですので、事後オッズは36で、これを確率に直すと、、、、オッズ÷(1+オッズ)ですので、97.3%となります。3%程度はインフルエンザではないのです。
逆にインフルエンザではないと言う結果が出たとしましょう。この場合には陰性尤度比というのをかけます。これは、(1-感度)÷特異度です。9分の1ですね。事前オッズ4×1÷9=9分の4です。
事後オッズは、30.7%になります。インフルエンザが陰性と出ても、可能性は30%も残されています!!
よって100%正しい診断を付ける事はほぼ不可能です。検疫で見逃すと言う事も十分あります。事前確率が高くてもこれですから、確率が低い場合には、、、、、、計算してみて下さい。
裁判ではこの場合無罪にする事が出来ますが、医療は難しいです。これについては別記事を、、、、
2009-05-31 07:00
nice!(2)
コメント(4)
検査の精度が100%だと思っている人はかなり多いですよね。
人間がやる以上、何でも100%と言うのは、先ずあり得ません。
メディアも事前にちゃんと調べてから報道して欲しいのもですね。
by shiraisi (2009-05-31 09:52)
shiraisiさん、コメント&nice!ありがとうございます。
裁判でも間違えますし、本当の事はなかなか分かりませんよね〜。
例えば、ミスではないのに骨折が分からないと言う事があると大変です。他の病院で調べてもらったら骨折していると言われたぞ!!と怒られる事は良くありますが、、、、これは別記事にしましょうか。
by Kim (2009-05-31 10:03)
立て続けになりますが…
数年前、近所の方で、脚を骨折した方が居ました。(場所は分かりません)
レントゲンでは、骨折所見が見つからないのでMRIで調べましょうと言う事になりました。
後日MRIで撮影した所、骨折発見でめでたしと思いきや先生から衝撃的発言が…「この場所の骨折で、MRIで映っているのならレントゲンにも映っているはず」と、レントゲンフィルムを見てみると、何と骨折しているのが写っていたそうです。
レントゲンは、難しいですね。
by shiraisi (2009-05-31 10:19)
shiraisiさん、コメントありがとうございます。
貴重な体験談ありがとうございます。そうなんです。レントゲンはそういう物です。専門の先生でも見逃します。
そして、あるはずだと思って見れば分かる事もあるのです。これも別記事に、、、、ネタの提供ありがとうございます!!
by Kim (2009-05-31 10:40)