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浸透圧を測りましょう! [研修医教育]

 意識障害の患者さん、特にお酒飲みの人の場合には、血清浸透圧を測定するようにお話しています。

 エタノール血中濃度を知りたいためです。一般的にエタノール血中濃度が200mg/dlを超えると意識障害が出現すると言われています。よって血中濃度が例えば100mg/dlの患者さんがいて、意識がおかしければ、別の原因を積極的に探さないといけないと言う訳です。
 しかし、何故浸透圧が関係あるのでしょうか?

 理由はいつもの通り3つです。

・浸透圧は緊急で簡単に測定できます(たぶん)。
 私が今まで勤めてきた病院(少ないですが)では、浸透圧を24時間測定できました。しかし、エタノール血中濃度はそうではありませんでした。検査の試薬の値段と、病院に入る収入から計算すると、月に10件ぐらい以上測定しなければならないようです。
 そして、浸透圧ギャップと言うのを計算すれば、血中エタノール濃度はだいたい分かります。

・検査データをきちんと解析すると言うクセがつきます。
 浸透圧ギャップを計算する事で、検査データをきちんと解析する練習が出来ます。

・算数の練習になります(^.^)。
 単純な計算ですが、時々計算しないと頭が惚けます(^.^)。

 浸透圧ギャップと言うのは、実際に測定した浸透圧と、通常浸透圧の大部分を占める物質から計算した予想浸透圧との差です。この差が大きい場合には、浸透圧を上げるような物質が血液中に大量にあると考えられます。

 例えばお酒を大量に飲んで意識がおかしい、、、CTを撮っても異常がない、、、、と言う場合に、エタノール血中濃度が予想できれば(至急で測定できればもっと良いのですが)、この人はエタノール血中濃度が高いから、お酒のせいかな、、、、しばらく経過を見てみようかと安心できます。が、血中濃度が低ければ、別な原因があるはずだと考えられます。

 ここには、アルコール血中濃度が0.3%を超えると意識がおかしくなるとあります。0.1%は1mg/mlですので、100mg/dlです。

 そのために浸透圧ギャップは有用です。浸透圧ギャップに、血中に大量にあると予想される物質の分子量の10分の1をかければ、その物質の血中濃度が予想できます。

 例えば浸透圧が369mOsm/kgで、Na137、BUN10.6、血糖304と言う患者さんがいます。予想浸透圧は、2×Na+血糖/18+BUN/2.8です。よって、294.7です。
 浸透圧ギャップは、369-294.7なので74.3です。エタノールの分子量は46なので、74.3×4.6=341となります。血中エタノール濃度が200を超えると意識障害が出てくるようです。よってこの患者さんは意識がなくてもおかしくありません(が、実際のこの人は自転車に乗っていました。完全なアル中なんでしょうね)。

 何故分子量の10分の1なのか、、、、考えるだけ損です。単位をそろえるための係数ですから。優秀な研修医の先生が教えてくれました。

 それから、先日この事を教えてあげた時、エタノールの分子量は確か46だった(自分の歳に近い、、、、と覚えています。ってまだまだ先ですが)と私が言ったら、そばにいた研修医の先生は、エタノールの構造式を書き出し、エタノールの分子量が46である事を導き出していました。す、す、す、すごい、、、、化学もっと勉強しておくんだった!

 医者を目指している高校生(あるいは浪人生)の皆さん!数学と化学(ついでに英語も)をしっかり勉強しておきましょうね!!

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地方の研修委員長

私が勤務していた病院の中でも、離島の病院では「浸透圧は外注ですよ」と言われていました(今は違うようです)。
病棟でよく遭遇する低ナトリウム血症の鑑別にも浸透圧が必要なので、いつも困っていました。

確かにエタノール濃度を直接測る事が出来る病院は神奈川の方の救急搬入が凄く多い病院だけでした。ERで頻繁に測っていたので血中濃度と意識障害の程度が必ずしも相関しない事がよく分かりました。

しかし、その研修医の先生はただ者ではありませんね、、、
尊敬します

by 地方の研修委員長 (2009-04-13 23:55) 

shiraisi

こんばんは。
あらららら…1~3の理由は、何だか痛い所をつつきますね。
算数苦手です。統計学も苦手です。(汗)
by shiraisi (2009-04-13 23:58) 

Kim

地方の研修委員長さん、コメントありがとうございます。

浸透圧が外注の所もあるんですね。そうなると、、、困りますが、エタノール血中濃度は低いと考えて患者さんを診療するしかないですね。

低ナトリウム血症も普通は本当に低いのでしょうから、、、

血中濃度が高くても平気な人沢山いるんですね。ご教授ありがとうございました。

by Kim (2009-04-14 07:54) 

Kim

shiraisiさん、コメントありがとうございます。

目の前に患者さんがいて、ある計算をしなければならないとすれば、普通は計算しますから大丈夫ですよ。苦手だからやらない、、、、っていえる人はあまりいません(^.^)。

by Kim (2009-04-14 07:55) 

地方の研修委員長

あまり医学的な表現ではありませんが、普段から飲み慣れている人はびっくりするような血中濃度なのに、陽 気に絡んできたりしていました。逆に飲み慣れていない人が歓送迎会でたくさん飲んだ時などは、そこまで血中濃度が上がっていないにも関わらず、昏睡状態になっていたり、、

血中濃度が400まで上昇していても、千鳥足で歩きながらしゃべりまくっていたアルコール依存症の人がいました。
一方で大学の新歓コンパで飲み過ぎて(飲まされすぎて?)、昏睡状態で救急搬入された若い女性の血中濃度が200弱しかなかった事もありました。

当院の院長や副院長は普段から鍛えているから400くらいまで上がっても問題ないかもしれませんね。

by 地方の研修委員長 (2009-04-14 21:57) 

Kim

地方の研修委員長さん、コメントありがとうございます。

普段から血中濃度が高いと慣れてしまうのでしょうね。透析患者さんで高カリウムに慣れている人も多いと聞いています。

人間はすごいですね!

by Kim (2009-04-14 22:10) 

DoctorNyanko

ちょっと古い日付ではありますが、知りたかったことが書いてあり助かりました。ありがとうございます。先生のご活躍をお祈りしています。
by DoctorNyanko (2012-11-15 10:20) 

Kim

DoctorNyankoさん、コメントありがとうございます。

役に立って良かったです!

by Kim (2012-11-15 11:47) 

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