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ローテーションは良い事です [研修医教育]

 ローテーション研修と言うのがあります。医師になって働き始めると、最初は内科を勉強し、数ヶ月したら外科、産婦人科、小児科、、、などと科を変わって行く方式です。私の所属する医療機関はずいぶん前から(何しろ私が医者になる前から)行っています。通常の研修病院も5年ほど前に医者の研修制度が変わってから行うようになっています。

 皆さんは不思議に思うかも知れませんが、医者の免許証と言うのは1種類しかありません。外科の免許とか内科の免許と言うのはないのです。よって、医学部では全員が内科も外科も産婦人科も小児科も、眼科も耳鼻科も、、、、学んでいます。が、医学部は医者を育てるためのものではないと言う文部科学省の意見?のためか、医学部での教育は、直ちに医師として働けるような教育ではありません。医学部では薬の商品名を勉強しませんので、卒業してすぐには風邪薬すら処方出来ません(と言うか風邪についての対応は習いません)。

 昔は例えば外科医になろうと思えば、卒業後すぐに外科に所属して外科の勉強をしました。しかし、それでは他の科は診れません。飛行機や新幹線、その他の場所でお医者様はいませんか!と言われても出てける知識や勇気は持てません。また患者さんは外科の病気だけ持っている訳ではないので、色々な知識が本当は必要です。よってローテーション研修が必要だと言うことに今はなっています。
 が、現在のローテーションを必須とする制度は無理があるとか、色々文句が出たようで、来年の卒業生(今の6年生)から内科半年だけが必須となり、外科、産婦人科、小児科などは必須ではなくなりました。よって今までは内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急、が必須だったのですが、内科、救急、外科、小児科(内科と救急以外に二つ勉強しないといけないらしいです)で良いと言う選択が可能です。

 が、私はこれに反対です。ローテーションと言うのはとても意義があると思うからです。理由は3つです。

・ローテーションする事で多少は勉強しようと言う気持ちが湧く
 何でもそうですが、全く知らない事は患者さんに適応しようと思いません。透析を勉強した事のない医者は、透析が必要な患者さんを目の前にしても、透析を行おうと言う考えが浮かんできません。時々でも透析を患者さんに行い続ければ、色々勉強して知識も維持できます(専門家にはもちろんかないませんが)。それが役に立つ事は必ずあります!

・他科の先生の気持ちが分かる
 私はこれが一番重要な事だと思いますが、将来内科に進むとしても、ある期間外科医として働く事はとても役立ちます。内科で診ていた患者さんが悪くなった時に、外科医はどう思うのか(もっと早く相談してくれれば、、、、)、逆に内科医は外科に申し訳ないから出来るだけ内科で診ようか、、、などと考えていますので、「何でこんなに悪くなるまで内科でみとるんや!!」等と言う言葉は出てこなくなります(が、残念ながら、こういう専門医の先生多いです)。

・やってみたら面白かったと言う事もある
 例えば、自分は子供が嫌いだから絶対に小児科には進まないと思っていた人が、小児科回ってみたら、子供と仲良くやれるし、内容も面白いし、、、、と言う事は良くあります。逆に専門として選んだ科があわなかった場合には、、、、大変ですので、ローテーションであうかあわないか確認する事は重要でしょう。

 よってお役所が制度を変えても、私の病院ではローテションを変更する事はきっとないでしょう。何故「きっと」なのか、、、研修委員長である私の力の大きさ次第です(^.^)。

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へびぱく

医師を養成する段階での研修において、
来専門とするであろう科だけを研修するという制度は、
私が知っている限りにおいて、日本だけです。
日本は高校卒業後、6年という短期間で医師免許を得られるのですから、
2年間はしっかりと広範囲の研修を受けるべきだと思います。
by へびぱく (2009-04-11 10:52) 

shiraisi

内科なら内科学会の認定証(?)があって、それで専門で診れるのでしたっけ?

これを読んでいると、更に診療科の偏りが出そうな気がします。
今のローテーション制度が無理だと判断しての結果なのでしょうが、どこがどの様に無理なのかちゃんと考えたのかも疑問ですけど…
by shiraisi (2009-04-11 12:00) 

nozaharu

3つの理由、ほぼ同意見です!研修医の方がいろんな科の先生とつながることで、よりスムーズな連携・診療につながるでしょうし、結果的に患者さんのためになると思います。

自分は15年目ですが、許されるなら研修医のローテションに入ってみたいです。うらやましいです。
by nozaharu (2009-04-11 13:24) 

Kim

へびぱくさん、コメントありがとうございます。

確かにアメリカは一度医学部以外の学部を出ないとダメですよね。例えば脳外科の専門医になるには、外科の研修をしないとダメだそうですしね。

アメリカのまねするならば、全部やって欲しいですね!

by Kim (2009-04-11 18:46) 

Kim

shiraisiさん、コメント&nice!ありがとうございます。

専門医は日本では自慢になるだけのものです。私は専門医を4つ持っていますが、、、、と書けるだけのものです。給料も変わりませんし、専門医でなければやれない事も別にありません。

それから、例えば内科は私が内科医ですと言えば、今からでもやれます。と言うか目の前に患者さんが現れたら、本来は何でも診療しないとダメです。
例外として、放射線科と麻酔科は認定を受けないとダメです(が、診療そのものは、その病院に認定された人が一人いればやれます)。

by Kim (2009-04-11 18:50) 

Kim

nozaharuさん、コメント&nice!ありがとうございます。

今日聞いた話です。ある先生が定年の数年前に辞めました。その先生は前からやりたかったという別の科の医者になると言って辞めたのだそうです。残りの医師人生を、その科の研修にあてる、、、と。

何だか素敵な話です。

私も苦手な科の研修をしてみたいな、、、、なんて思います。

by Kim (2009-04-11 18:52) 

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